傷、ケガ、やけど

傷(外傷)について

傷(外傷)について外からの力によって皮膚をはじめとした組織や臓器が受けた損傷が傷です。物理的損傷、化学的損傷、機械的損傷に分けられます。当院では皮膚科専門医が機能を損なわずにきれいに治すことを重視して、できるだけ痛みのない丁寧な治療を行っています。
必要に応じ縫合処置も行います。
感染を起こしている場合は抗生物質の内服、点滴を行います。

代表的な傷の種類

どんな傷でもできるだけ早く適切な処置を受けることで、よりきれいに治せる可能性が高くなります。また機能を損ねないためにも早期に受診してください。特に、顔や手足、首など、目立つ場所に傷ができた場合には、すぐに治療してください。

外傷の治療

切創

ガラスや刃物といった鋭利なもので皮膚が切れてしまった切り傷です。
手足の場合、皮膚のすぐ下の浅い部分に神経や血管、腱などがあり、深い傷ではなくてもこうした組織に損傷を受けている可能性があります。機能に問題を残さないよう、早期に受診して適切な処置を受けることが重要です。
顔面の場合は、表情をつくる顔面神経、目頭にある涙小管、唾液が流れる耳下腺管などの重要な機能を担った器官損傷の有無を確認し、適切な処置を受けることが必要になります。
切創を生じたら、ガーゼなどで受傷部分を保護・圧迫して速やかに受診してください。また手足の場合には傷を心臓よりも上の位置に保つと出血を抑えられます。
切創は周囲の組織への損傷が比較的軽度ですから、早期に受診して適切な処置や縫合を受けることで早めの治癒が期待できます。当院では、縫合に細い糸を使用して、できるだけきれいに治るよう心がけています。症状によっては専用のテープで創部を固定する場合もあります。

擦過傷

転んでアスファルトにこすられるなどにより、皮膚がすりむけてしまっています。傷自体は浅いので縫合の必要なく治る場合が多いのですが、放置してしまうと傷の中に細かい土砂や異物が残ったまま治ってしまう外傷性刺青を生じることがあります。外傷性刺青は傷が治ってからかなり目立ってしまうこともよくあります。擦り傷による外傷性刺青を防ぐためには、ケガをしてすぐに創部をきれいに洗浄・ブラッシングして異物を除去する必要があります。皮膚科を受診することでできるだけ痛みの少ない丁寧な処置が可能になります。

裂挫創

皮膚が裂けてしまっている状態で、鋭利ではないものによって生じます。切り傷と違い、周囲組織にも損傷が及んでるため、治癒に時間がかかるケースが多くなっています。また、感染を起こすリスクが高いため、十分な洗浄、抗生剤投与が必要になります。ケガをした場所などによっては破傷風予防薬投与も検討する必要があります。
広範囲に損傷が及んでいる場合が多く、皮膚のへこみ・盛り上がり・色素沈着などが残ってしまうケースも多くなっています。できるだけきれいに治すためには早期治療が重要です。また傷痕が残った場合も治療が可能です。

刺創

先端が尖った鋭利なものでできた刺し傷で、傷口が小さくても深部にまで達しています。血管や神経、腱、臓器などにまで損傷が及ぶこともあります。また、内部で尖った先端が折れて残ってしまった際には摘出が必要です。状態を正確に見極めて、異物除去、止血、深部組織修復といった処置をしっかり行うことが重要です。
当科では特殊なレンズ「ダーモスコピー」で創部をしっかり見て異常を確認します。

咬傷

動物やヒトに咬まれてできた傷です。動物やヒトの口内には多くの病原体が含まれているため、傷の中でも感染頻度が高くなっています。十分な洗浄や抗生剤の投与に加え、破傷風予防注射を行う必要が生じるケースもあります。
咬み傷は、適切に処置した場合でもすぐに縫合してしまうと化膿する可能性が高いため、縫合せずに治癒させることがあります。

熱傷とは

熱傷とは熱傷は、いわゆる「やけど」のことで、日常的に生じやすい外傷です。皮膚が高温による作用を受けて起こり、高温の液体、金属、炎、爆発などによって生じます。また、強い酸やアルカリなどの薬品や放射線などによる化学熱傷、電流による電撃傷も熱傷に含まれます。近年、増えている低温やけどは、44~60度という低い温度に長時間さらされたことで生じる熱傷で、表面は赤みがある程度でも深部に深刻な損傷が起こっていることもあり、湯たんぽや電気毛布などを使う際には注意が必要です。
熱傷は、受傷した部位、面積、深さによって、治った後に隆起や陥没、色素沈着、赤み、引きつれといった瘢痕やケロイドを残しやすい傾向があります。
熱傷は深さによって、表皮のみに損傷がとどまるⅠ度、真皮層まで達したⅡ度、皮下組織や骨まで達したⅢ度に分類されます。深度と推定した受傷面積、年齢、受傷部位から重症度を判断します。
直後のやけどは軽く見えても悪化するケースが多いので30分ほど冷やし医療機関を速やかに受診してください。

熱傷の治療

Ⅰ度熱傷

表皮のみに生じたやけどで、症状は皮膚の赤みです。痛みや浮腫を伴うこともあります。創部をすぐに流水などでしっかり冷やすことが有効です。軟膏塗布で傷痕を残さずに治癒できます。治療期間は数日程度です。

Ⅱ度熱傷

表皮の下の真皮に達したやけどで、赤みや水疱、強い痛み、灼熱感などを生じます。真皮浅層熱傷(SDB)と真皮深層熱傷(DDB)に分けられます。
SDBは早期に受診して適切な水疱処置、軟膏塗布などの治療を受けることで傷痕や色素沈着を残さずきれいに治る可能性が高くなります。
DDBでは、感染リスクが高くなるため抗生剤の処方が必要になるケースがあります。また、外科的な処置を行う場合もあります。DDBは治癒までに時間がかかり、傷痕を残すこともあります。
SDBとDDBの判断は難しいので、水疱や痛みのある場合はできるだけ速やかに受診してください。治療期間は数週間程度です。

Ⅲ度熱傷

皮下組織や骨にまで達したやけどです。水疱はなく、創部は灰白色や褐色になり、知覚もなくなるため疼痛もありません。程度が重い場合は炭化・壊死することもあります。早急な受診と外科的治療が必要な状態です。

受傷してから正常に治癒が進む傷痕の経過
(創傷治癒過程)

最初の3か月程度は赤みや硬さが現れ、それを超えると少しずつ傷痕が白く・やわらかくなっていき、デコボコも平坦に近づき、半年から1年で炎症がおさまった成熟瘢痕となって落ち着きますが個人差があります。

肥厚性瘢痕・ケロイド

治癒の過程で線維組織が増え過ぎると、傷痕が赤く盛り上がってミミズ腫れのようになります。この状態は肥厚性瘢痕と呼ばれます。肥厚性瘢痕が周囲にも広がるケロイド、引きつれを伴う瘢痕拘縮などを起こすことがあります。皮膚の盛り上がり、赤み、へこみ、引きつれ、色素沈着などが複数生じることもあり、厳密な区別は困難です。ケロイドを生じやすい体質的要因もあります。
見た目の問題だけでなく、かゆみや痛み、動かしにくさなどの症状を起こすことがあり、傷痕も治療対象になります。

肥厚性瘢痕・ケロイドの治療

治療は保険適用されます。薬などを使った保存的療法と手術、放射線治療に分けられます。

保存的療法

ステロイドの貼り薬・塗り薬・注射、シリコンシートやテープによる圧迫、ケロイド形成を抑制する内服薬などによる治療を行います。

手術(外科的療法)

盛り上がっている部分を切除して、Z形成術や局所皮弁などを使って丁寧に縫合します。連携している高度医療機関をご紹介しています。

放射線治療

検討したいというご希望があれば、連携している高度医療機関をご紹介しています。

色素沈着

色素沈着傷痕、炎症にメラニン色素が沈着して、皮膚の色が濃くなってしまう色素沈着を起こすことがあります(シミ、肝斑も炎症後色素沈着の一種です)。目立つ場所に生じると印象を大きく左右することがあります。色素沈着は、市販の美白化粧品などによるセルフケアもありますが、皮膚科専門医では色素沈着改善の高い効果が期待できる複数の治療が可能です。お気軽にご相談ください(一部自費)。

薬物療法

薬物療法には、大きく分けて内服薬(トラネキサム酸やビタミン剤など)と、外用薬(ハイドロキノン、外用ビタミンCなど)があります。

内服薬

肌コンディションを整えるビタミンC・ビタミンE、肝斑への有効性が期待できるトラネキサム酸などの処方を行っています。

外用薬

肌コンディションを整えるビタミンC外用剤、メラニン色素の産生に関与する酵素を阻害してメラニン色素をつくるメラノサイトを攻撃するハイドロキノンなどを使った治療が可能です。ハイドロキノンやトレチノインは使いはじめに赤みやひりつきなどの作用が生じることがあります。

皮膚科専門医による治療を受けるメリット

原因によって有効な治療法は異なるので、市販品を安易に使うと症状が悪化することもあります。また、一定期間の紫外線ケアを厳格に行わないとかえって色素沈着を悪化させてしまうケースもあります。当院では皮膚科専門医が適切な処方を行っており、セルフケアについても丁寧にお伝えしています。
皮膚科では、特殊なレンズ「ダーモスコピー」を使い色素沈着の分布や色調、性状といった特徴、出現時期やきっかけ、肌の状態などを総合的に診断しています。病的な原因が関与しない色素沈着の治療は基本的に美容目的となり、健康保険適用されない自費診療です。ただし、皮膚科では原因や肌の状態に合わせた最適な治療が可能であり、市販のケア用品を使う場合に比べて短期間で高い効果が期待できます。
色素沈着でお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

にきび痕

にきび痕は、にきびが治った後に残る赤み、色素沈着、皮膚のへこみ、皮膚の盛り上がりなどです。白にきびや黒にきびなど軽症のにきびが悪化せずに治った場合には、にきび痕をほとんど残しませんが、赤にきび・黄色にきび、紫にきびなど炎症が悪化して皮膚深部に及んだ場合にはにきび痕が残りやすくなります。
にきび自体は保険診療での治療が可能ですが、にきび痕に関しては自費診療の治療が必要になる場合もあります。

ケミカルピーリング

酸を顔全体に塗布し、古い角質を取り除いて皮膚のターンオーバーの正常化を促します。ケミカルピーリングでターンオーバーが促進されると色素沈着が薄くなるのが早まりやすくなります。なお、乾燥肌・敏感肌の方の場合には刺激を調整するために、反応をきめ細かく観察して塗布時間を変えています。
色素沈着などの改善に加え、にきび痕の肌質改善にも有効です。また、毛穴の開き・黒ずみ・肌のくすみ改善や小じわにも効果が期待できます。
ケミカルピーリングは長く行われてきており、安全性や効果も十分にわかっています。

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